女というもの


女の尻は引き締まっているのが好きだ。金持ちに媚びてぜいたくに暮らすあまりすっかり尻の緩んでしまった女は嫌だったし、身体の線のしなやかにうねるのが美しかった女が子を孕んであちこち膨らんでいる様を見るにつけ、酷く残念な思いでジャミルの胸はちくちくと痛むのであった。女は尻でそれまでの生き方が決まる。汗の滴る女の尻を掴みながら、ジャミルは思う。
背中に広がる豊かなブルネットを掬い上げると、南方の花のにおいが湧きたった。多分赤い花だ。この女は南方から流れてきた奴隷商から献上された品だった。他の奴隷とは違い、娼婦として整え飾り立てられ、傷一つないすべすべとした肌を晒している。指も労働など知らない美しさで、精緻なつくりの薄い爪が乗っている。けれど、ジャミルが腰を押しつけるたびに女の細い尻やその先につながる太腿はぶるぶると肉を震わせ、汗の粒が小刻みに飛び散った。それがジャミルは少し気に入らなかった。美しさ柔らかさと娼婦として申し分のない女だが、この女は次にまた奴隷商が来たときにでも売ってしまおう。ジャミルは女の腰を乱暴に掴むと、女の肌が波打つ。何と緩い、どこまでも緩い。


ずた袋の中を無造作に掴んだてのひらを汚いつむじの上でぱっと離すと、黄色い粒が無数に落ちて石の床を跳ね回った。俯いていたので見えなかったが、きっとモルジアナのあの石のように硬い目はその軌跡を忙しなく追っている。吐息が少しだけ震えている。昼の日差しが少し眠たい色で彼女をなめている。
「食べてもいいぞ、モルジアナ」
特に彼女を虐げる理由もなかったし、今夜寝台に待たせてある新しい娼婦を思い出すとジャミルは格別に上機嫌だった。モルジアナが少しだけ顔を上げてジャミルの顔を窺い、そっとしゃがんで粒をちまちまと拾う。モルジアナは床に落ちたものを食べるのが似合っている。彼女の煤けた左手にトウモロコシの粒が盛られていく。
「そっちにもある。もったいない。モルジアナ、残すなよ」
ジャミルが顎で遠くに落ちているトウモロコシを指すと、モルジアナは膝立ちでそれを取りに行く。鎖を引きずる擦れた音が追いかけて、身の丈に合わない服の隙間から尻が見え隠れした。そういえば十二くらいになったのだろうか。モルジアナに誕生日はない。地面ばかり見ている赤い髪を、這いつくばりながらトウモロコシを拾うモルジアナの幼い尻を、ジャミルは何とはなしに見ている。


モルジアナの尻はかたく引き締まって肉の余地を残さず、けれど円い稜線を得ている。
――ぜいたくをしているでもなしに、丸くなるものなのか。
それが女というものか。
下半身が熱かった。南の花のにおいに囲まれて、ジャミルは最後に腰を打ちつけると、女の体内に流れ出すままに欲を注ぎ込む。寝室の扉の外にはモルジアナを立たせている。女に注いだ分、腹の底が冷えていく。女から性器を抜いて、ジャミルはシーツに顔を埋めた。寝台が南方の花のにおいでいっぱいだ。明日まとめて洗わせよう。
「領主さま」
ブルネットの隙間から女の口紅が笑っていた。ジャミルはシーツから顔を上げて誤魔化すように笑い返すと、まるで恋人にするかのように彼女の頬や頭を撫でてやった。顔が見えた途端、これまで彼の身体の下でうねっていたこの女を守りたいと思えてくる。女とはこの娼婦のようなものを言うのだ。多少尻が緩くても、美しく花のにおいをまとって抱かれるのが女なのだ。尻で女は決まらない。やはりこの娼婦を売るのはやめよう、とジャミルは眠気に巻かれて目を閉じながら考えた。そうして、明日、モルジアナに身体に合った服を買ってやるのだ。







何しろアニメマギのモルジアナの尻がたまらない。
何モルでも、ジャミモルを原点にしているに違いないと思うのです。
12/11/17